高齢ドライバーによる交通事故の増加は、世界共通の課題となっています。各国では、この問題に対してさまざまな対策を講じています。
アメリカでは、州によって対策が異なりますが、多くの州で高齢者の免許更新期間を短縮しています。例えば、イリノイ州では75歳以上の運転者に対して2年ごとの更新を義務付けており、さらに75歳以上は実車試験も課しています。
欧州では、EU加盟国の多くが高齢者の免許更新期間を短縮しています。例えば、オランダでは70歳以上の運転者は5年ごとに更新が必要で、更新時には医師の診断書の提出が義務付けられています。
オーストラリアのニューサウスウェールズ州では、85歳以上の運転者に対して毎年の医師による健康診断と2年ごとの実車試験を課しています。また、75歳以上の運転者には、運転を継続するか返納するかの選択を毎年求めています。
日本の免許返納制度と比較すると、海外では医師の診断や実車試験を重視する傾向が強いことがわかります。
世界各国では、高齢ドライバーの免許返納を促進するためのさまざまな支援制度や特典を設けています。
韓国では、免許を自主返納した65歳以上の高齢者に対して、公共交通機関の利用料金を割引する「高齢者交通カード」を交付しています。釜山市では、このカードを使用することで、バスや地下鉄の運賃が最大100%割引されます。
アメリカのフロリダ州では、免許を返納した高齢者に対して、州発行の身分証明書を無料で発行しています。この身分証明書は、運転免許証の代わりとなる公的な身分証明書として使用できます。
ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州では、70歳以上の運転者が免許を返納すると、1年間の公共交通機関の無料パスが提供されます。
これらの支援制度は、高齢者の移動手段を確保しつつ、安全な交通環境を実現することを目的としています。
国土交通省:諸外国の高齢者に係る運転免許制度
このリンクでは、各国の高齢者運転免許制度の詳細な比較が掲載されています。
免許返納を推進する一方で、高齢者の移動手段をどのように確保するかが世界共通の課題となっています。特に、公共交通機関が十分に整備されていない地方部では、この問題が顕著です。
アメリカのいくつかの州では、高齢者向けの無料または低料金のタクシーサービスを提供しています。例えば、カリフォルニア州のサンタモニカ市では、「Dial-a-Ride」というサービスを実施しており、65歳以上の高齢者や障がい者が低料金で利用できるドア・ツー・ドアの交通サービスを提供しています。
ドイツでは、「市民バス」と呼ばれるボランティアドライバーによる交通サービスが普及しています。これは、地域住民がボランティアでドライバーとなり、小型バスで高齢者などの交通弱者を送迎するシステムです。
日本でも、一部の地域で「デマンド交通」や「コミュニティバス」などの取り組みが行われていますが、さらなる拡充が求められています。
自動運転技術の発展は、高齢ドライバーの問題に新たな解決策をもたらす可能性があります。世界各国で自動運転技術の開発と実用化が進んでおり、これらの技術が高齢者の安全な移動手段として期待されています。
アメリカのウェイモ社(Google の親会社 Alphabet の子会社)は、完全自動運転タクシーの実用化に向けて実証実験を進めています。2020年からアリゾナ州フェニックス周辺で一般向けサービスを開始しており、高齢者や障がい者の移動手段としても注目されています。
日本でも、2020年4月から改正道路交通法が施行され、レベル3の自動運転車の公道走行が可能になりました。トヨタ自動車やホンダなどの自動車メーカーが、高度運転支援システムを搭載した車両の開発を進めています。
これらの技術が普及すれば、高齢者が安全に移動できる新たな選択肢となる可能性があります。ただし、完全自動運転の実現にはまだ時間がかかると予想されており、当面は運転支援技術の活用が中心となりそうです。
内閣府:交通安全白書(高齢運転者の安全運転を支援する先進安全技術)
このリンクでは、高齢運転者の安全運転を支援する最新技術について詳しく解説されています。
世界の免許返納制度や高齢ドライバー対策を踏まえ、家族として高齢の運転者にどのように向き合うべきか考えてみましょう。
世界の事例を参考にしつつ、日本の実情に合わせた対応を家族で考えていくことが大切です。高齢者の尊厳を守りながら、安全で快適な生活を送れるよう、家族全体でサポートしていくことが求められています。
警察庁:高齢運転者対策
このリンクでは、日本の高齢運転者対策や免許返納制度について詳しく解説されています。家族で対策を考える際の参考になります。